酵素処理ヘスペリジン
英名: Enzymatically modified hesperidin
CAS No. α-glucosyl-hesperidin として 161713-86-6 JECFA No. 該当なし
別名: 糖転移ヘスペリジン、糖転移ビタミン P
構造式: 1)
柑橘類の果皮、果汁、又は種子より、アルカリ性 水溶液で抽出して得られるヘスペリジンに、シクロデキストリングルコシルトランスフェラーゼを用いて D-グルコースを付加して得られたものである。
強化剤
急性毒性試験
ラット(Wistar)経口 LD50 > 2,000 mg /kg 体重 2)
反復投与毒性試験
Wistar ラット(一群雌雄各 5 匹)を用いた混餌投与(酵素処理ヘスペリジン: 0、 100、2,000、15,000 ppm)による 28 日間反復経口投与試験では、死亡例はなく、一
般状態、体重増加量、摂餌量、尿検査、血液検査、剖検による器官・組織の肉眼的観察、器官重量及び病理組織学検査に異常は認められなかった 2)。
Wistar ラット(一群雌雄各 10 匹)を用いた混餌投与(酵素処理ヘスペリジン: 0、 4,500、15,000、50,000 ppm)による 90 日間反復経口投与試験では、死亡例はなく、一 般状態、体重増加量、摂餌量、尿検査、血液検査、剖検による器官・組織の肉眼的観察、器官重量及び病理組織学検査に異常は認められなかった 2)。
HanRcc:WIST ラット(一群雌雄各 5 匹)を用いた混餌投与(グルコシルヘスペリジン:0、100、2,000、15,000 ppm:雄 0、8.09、157.24 及び 1,205.77 mg/kg 体重/日 、
雌 0, 8.47, 170.98 及び 1,279.94 mg/kg 体重/日相当)による 4 週間反復投与試験では、死亡例はなく、摂餌量、体重増加量、一般状態、血液検査、尿検査、剖検による器官・組織の肉眼的観察、器官重量及び病理組織学検査に投与に関連した異常は認められなかった 3)。
HanRcc:WIST ラット(一群雌雄各 10 匹)を用いた混餌投与(グルコシルヘスペリジ ン:0、4,500、15,000、50,000 ppm:雄 0、279.24、926.54 及び 3,083.99 mg/kg 体重/日 、雌 0、322.46、1,063.96、3,427.84 mg/kg 体重/日相当)による 13 週間反復投与試験では、死亡例はなく、摂餌量、体重増加量、一般状態、血液検査、尿検査、剖検による器官・組織の肉眼的観察、器官重量及び病理組織学検査に異常は認められなかった 3)。
変異原性試験
Salmonella typhimurium TA98、TA100、 TA1535、TA1537 株及び Escherichia coli WP2uvrA 株を用いて、5,000 µg/plate を最高用量とした Ames(復帰突然変異)試験が実施されており、S9 mix の有無に関わらず、結果はすべて陰性であった 2, 3)。
チャイニーズハムスター肺由来の線維芽細胞株(CHL/IU)を用いた染色体異常試験が、5,000 µg/mL を最高用量とした短時間処理法(S9 mix の有無に関わらず、6 時間処理) 及び連続処理法(−S9 mix、24 時間処理)で実施されており、結果はすべて陰性であった 2)。
ICR マウス(一群雄 5 匹)に酵素処理ヘスペリジン 2,000 mg/kg 体重を最高用量として単回経口投与後(24 時間後と殺)に骨髄小核試験が実施されており、結果はすべて陰性であった 2)。
グルコシルヘスペリジンとして、チャイニーズハムスター肺由来の繊維芽細胞
(CHL/IU)を用いた染色体異常試験において S9mix の有無に関わらず陰性である。また、ICR マウスを用いた小核試験において陰性である 4)。
その他
催奇形性試験(ラット)
SD ラット妊娠雌(一群 20 匹)の妊娠 6 日から 17 日に強制経口投与(酵素処理ヘスペリジン:0、100、300、1,000 mg/kg 体重/日)した催奇形性試験では、死亡例はなく、母動物の妊娠期間の一般状態、体重増加量、摂餌量、剖検及び器官重量に異常は認められなかった。また、妊娠黄体数、着床数、胎児の生存数、性比、死亡胚・胎児数、胎盤重量、外表検査、骨格検査及び内臓検査に異常は認められなかった 2)。
Crl:CD(SD)ラット妊娠雌(1 群 20 匹)の妊娠 6 日から 17 日に水を溶媒として強制経口投与(グルコシルヘスペリジン:0、100、300、1,000 mg/kg 体重/日)した催奇形性試験では、母動物の死亡例や流産はなく、一般状態、体重増加量、剖検及び器官重量に投与に関連した変化は認めなかった。また、帝王切開で摘出した仔動物は何れも生存し
ており、1,000 mg/kg 体重/日の雌の体重は対照群より有意に増加していた。妊娠黄体数、着床数、胎児の生存・吸収数、死亡胚、性比、生存雄児の重量、胎盤重量、着床比、生 存胚・吸収杯・死亡胚比に有意な変化は認めなかった。骨格の変化が全群で観察された が、投与に関連した増加は認めなかった 3)
抗原性試験(遅延型皮膚反応試験:モルモット)
GOHI モルモット雌(被検群 10 匹、対照 5 匹)の肩部皮膚(除毛)に酵素処理ヘスペリジ 5%水溶液を皮内注射し、1 週間後に 50%水溶液を皮膚に閉塞貼付し感作を誘導した。さらに、2 週間後に腹側部皮膚(除毛)に 5%水溶液を閉塞貼付し 24 時間の惹起暴露を行った遅延型皮膚反応試験を実施したところ、酵素処理ヘスペリジンの抗原性は認められなかった 2)。
食品安全委員会新開発食品専門調査会では、関与成分としてモノグルコシルヘスペリジンを含む特定保健用食品について、提出された資料の範囲においては安全性に問題はないと判断している 2)。
海外評価書における扱い海外での評価情報なし
規格あり
酵素処理ヘスペリジンは、その基原、製法及び本質と、入手可能な安全性試験の情報
(急性毒性試験、反復投与毒性試験、変異原性試験並びにその他の毒性試験情報)に鑑みて、人の健康影響に対する懸念はないものと結論された。
Mika Y., Fujimi T., Norie A., Hitoshi M., Yoshikatsu M., Michio K., Hiroto C. and Masayoshi K. Bioavailability of Glucosyl Hesperidin in Rats. Biosci., Biotechnol., Biochem. 2006; 70; 1386-1394.
特定保健用食品評価書「トリグリティー、ミドルケア粉末スティック」食品安全委員
会. 2011 年 6 月.
Hans-Eric Wollny, Marus arenz and Frauke Hermann: Salmonella typhimurium and Escherichia coli reverse mutation assay with α-glucosyl-hesperidin. CCR, CYTOTEST CELL RESEARCH GEBH & Co. KG, 1997
Matsumoto S., Hashimoto T., Ushio C., Namekawa K., and Richards AB. Glucosyl hesperidin: safety studies. Fundam. Toxicol. Sci., 2019; 6: 299-317.