酵素処理イソクエルシトリン


1.食品添加物名
 酵素処理イソクエルシトリン (Enzymatically modified isoquercitrin)

2.基原・製法・本質
 「ルチン酵素分解物」とでん粉又はデキストリンの混合物に、シクロデキストリングルコシルトランスフェラーゼを用いてグルコースを付加して得られたものである。主成分はα-グルコシルイソクエルシトリンである。

3.主な用途
 酸化防止剤

4.安全性試験成績の概要
(1)単回投与試験
 急性毒性LD50はラットで25g/kg超と考えられる1)

(2)反復投与試験
 F344/DuCrj系ラットを用いた混餌(0.3、0.625、1.25、2.5%)投与による90日間反復投与及び28日間回復試験を行ったところ、体重変化について反復投与群では有意差が認められなかったが、回復試験群の雌雄2.5%群では投与期間と回復期間の両方でわずかな低値傾向を示した。尿検査では雄の2.5%群でケトン体が高値を示した。また、病理組織学的変化は伴わないが、剖検所見では1.25%以上の雌雄で大腿骨の黄色化が認められた。この黄色変化は投与検体の沈着によるものと考えられるが、28日間の回復期間後にも残存していた2)。これらの結果より無毒性量は0.625%(雄で394mg/kg/day、雌で397mg/kg/day)と考えられる。

(3)変異原性試験
 細菌を用いた復帰突然変異試験の結果は、高用量域で陽性との報告4)もあるが、陰性との報告3)もあり、陽性結果の再現性が認められない。哺乳類培養細胞を用いた染色体異常試験5)では、最高用量(5mg/ml)の48時間連続処理のみにおいて、わずかな異常細胞の増加が観察されたが、用量反応関係も認められず、生物学的に意味のあるものとは考えがたい。さらに、マウスを用いた小核試験6)の結果が陰性であることを考え合わせると、生体にとって問題となるようなものではないと考えられる。


(引用文献)

  1. サンメリン11130のラットにおける急性経口毒性試験,1987.1.,社内データ(未公表)
  2. 酵素処理イソクエルシトリンのラットにおける90日間反復投与毒性試験ならびに28日間復性試験,1998.6.,社内データ(未公表)
  3. 微生物を用いる突然変異試験報告書,1986.12.,社内データ(未公表)
  4. 宮部正樹:厚生省平成10年度食品添加物安全性評価試験,Ames法,名古屋市衛生研究所
  5. 祖父尼俊雄:厚生省平成10年度食品添加物安全性再評価等の試験検査,染色体異常試験,国立衛生試験所
  6. 谷孝之:厚生省平成10年度食品添加物安全性再評価等の試験検査,変異原性試験(マウス小核試験),神奈川県衛生研究所