ロシン
1.食品添加物名
ロシン(マツの分泌液から得られた、アビエチン酸を主成分とするものをいう。)
2.基原、製法、本質
マツ科マツ(
Pinus palustris
MILL.)の樹皮の分泌液より、低沸点部を蒸留により除去して得られたものである。主構成成分はアビエチン酸である。
3.主な用途
ガムベース
4.安全性試験成績の概要
(1)反復投与試験
F344 ラットを用い、検体濃度を 0.03、0.125、0.5、2.0%
となるように調整し、混餌投与にて 90 日間反復投与試験を実施した。死亡や病理組織学的な毒性変化は認められなかったが、2.0%
群では雌雄ともに、体重増加抑制と摂餌量の低下が認められた。また、血液学的検査、血液化学的検査及び組織重量測定において、多項目で有意な増加や減少が認められた。これらの変化の一部はロシンのテルペン臭による餌の忌避に起因すると考えられた。
0.5%群では、雄で体重増加抑制が認められ、血液学的検査、血液化学的検査及び組織重量測定の一部の項目では2.0%と同じ変化が認められた。また、雌雄で、肝重量相対重量の増加が認められ、被験物質投与との関連性が示唆された。0.125%
群以下では、幾つかの項目で有意差が認められたが、その変化は小さく、被験物質の毒性を意味する変化とは考えないこととした。無毒性量は、雌雄で0.125%
と推定された。1)
(2)遺伝毒性試験
細菌(TA98、TA100、TA1535、TA1537、TA1538)
を用いた復帰突然変異原性試験は、5000
m
g/plate まで試験されており、代謝活性化の有無にかかわらず陰性であった。2
)
哺乳類培養細胞(CHL/IU)を用いた染色体異常試験は、最高用量(5000mg/ml)
まで試験されており、代謝活性化の有無に係わらず、被験物質投与に起因する染色体異常の明確な誘発は認められない。3)
マウスを用いた小核試験は、2000mg/kgまで試験されており、いずれの用量においても小核誘発性は認められなかったことから、陰性と結論された。4)
従って、遺伝毒性はないものと考えられる。
(引用文献)
1. 渡辺敦光:平成10
年度食品添加物規格基準作成等の試験検査、広島大学
2. 宮部正樹:平成9
年度食品添加物規格基準作成等の試験検査、名古屋市衛生研究所
3.及び4. 栗田年代:
平成9年度食品添加物規格基準作成等の試験検査、財団法人残留農薬研究所