ルチン酵素分解物

  1. 食品添加物名

    ルチン酵素分解物(「ルチン(抽出物)」から得られた、イソクエルシトリンを主成分とするものをいう。)

  2. 基原、製法、本質

    「ルチン(抽出物)」を、酵素(ナリンジナーゼ、ヘスペリジナーゼ又はラムノシダーゼ)処理した後、精製して得られたものである。主成分はイソクエルシトリンである。

  3. 主な用途

    酸化防止剤

  4. 安全性試験成績の概要

    1. 9 0日間反復投与試験

      Wistarラットを用い、被験物質浪度を0.2、1.05.0%となるように調製し、混餌投与にて90日間反復経lコ投与試験を実施した。その結果、雄の5.6%群でルチン酵素分解物によると考えられる体重の増加抑制、ヘモグロビン最及びヘマトクリッ卜値及びトリグリセライドの減少が認められたが、雌においては被験物質の投与に起因する明らかな誨性影孵は認められなかった。従って、無毒性量は雄で1.0%

      (539 mg/kg/日)、雌で5.0% (3,227 mg/kg/日)と推察される。1)

    2. 迫伝毒性試験

      紬菌(TA98,TA100,TA1535.,TA I 537,TA1538)を用いた復帰突然変異原性試験は、 TA98及びTAI537に対し、代謝活性化の有無にかかわらず、溶媒対照の2倍以上のHis+復帰コロニーを誘発し、談度依存性及び再現性が認められたことから陽性と判断された。2)

      哺乳類培槌細胞(CHL)を用いた染色体異常試験は、短時間処理法ならびに迪続処理法ともルチン酵素分解物の投与に起11,1する染色体異常の明確な誘発は認められなかった。3)

      マウスの骨髄を用いた小核試験では、いずれの用屈においても小核誘発性はないと結諭された。4)

      以上の結果から、細薗を用いた復帰突然変異試験で陽性の結果が得られているが、十分高用最まで試験されたin vivoの小核試験では陰性であることなどを総合的に評価すると、本物質が生体にとって特に問題となるような遺伝毒性を発現することはないものと考えられる。

    3. 1年間反復投与毒性試験

Wistar Hannoverラットを用いた混餌(0.040.215%)投与による1年間反復投与毒性試験では、被験物質投与との関連を示唆する動物の死亡、血液学的検杏、血液生化学的検査及び器官重贔の変化は認められなかった。体菫の変化は認められなかったが、摂餌量は5%群の雄で高値を示した。

一般状態では、5%群の雌雄で着色尿が認められ、尿検査では、1%群及び5%群の雌雄で濃色尿が、5%群の雌雄でカルシウム1日排泄抵の高値が、雄で尿中カルシウ

ム濃度の高値が、また1%群の雄で尿中カリウム及び塩素濃度の高値が、1%以上の群の雄でそれらの1日排泄量の高値が認められた。

剖検では、1%群の雄及び5%群の雌雄で被験物質の沈着を示唆する大腿骨表面の黄色化が認められた。

病理組織学的検査では、5%群の雄で腎孟の鉱質沈着が認められ、鉱質沈着と関連する変化と考えられる腎孟の炎症性細胞残屑、炎症性細胞浸潤及び移行上皮過形成の増加傾向が認められた。

以上から、無毒性量は雌雄の5%群に認められたカルシウム一日排泄量の増加、雄の5%群の尿中カルシウム濃度の高値、並びに腎孟における鉱物沈着を毒性所見と考え、雌雄で1%(雄:634 mg/kgiday、雌:788 mg/kg/day)と判断された。5)


(引用文献)

  1. 広?頼雅雄:ルチン酵素分解物のWistarラットにおける90日反復投与毒性試験、平成11年度食品添加物規格括準設定等試験検査

  2. 宮部正樹:平成10年度食品添加物規格基準作成等の試験検査、名古屋市衛生研究所

  3. 望月信彦:平成10年度食品添加物規格基準作成等の試験検査、財団法人食品股医

    薬品安全性評価センター

  4. 岩本毅:平成10年度食品添加物規格基準作成等の試験検査、財団法人残留殷薬研究所

  5. 三森国敏:原生労働科学研究喪補助金`「既存添加物の発がん性等に関する研究一

ルチン酪素分解物のラットにおける52週間混餌投与試験ー」、東京農工大学