メバロン酸

1.食品添加物名
 メバロン酸
2.基原、製法、本質
 酵母( Saccharomycopsis fibuligera )によるコーンスチープリカー又はカゼイン由来のペプトンを主原料とする発酵培養液より、有機溶剤で抽出して得られたものである。成分はメバロン酸である。
3.主な用途
 製造用剤
4.安全性試験成績の概要
(1)反復投与試験
 F344系ラットに被験物質を400、2000、10000ppmの濃度で飼料に混入し、90日間反復投与試験を行った。その結果、動物の死亡は認められず、一般状態及び摂餌量にも変化は認められなかった。体重では、雌雄とも10000ppm群で有意な増加抑制が認められた。
血液学的検査では、10000ppm群において、雄で赤血球数が、雌でヘモグロビン及びヘマトクリット値が有意に減少し、それぞれ軽度な貧血傾向が観察されたが、造血器系臓器において病理組織学的変化は見られなかった。
 血液生化学的検査では、10000ppm群において、雌雄でのALT上昇、雄でのAST上昇、雌でA/G比の低下、総コレステロール及び中性脂肪値の有意な増加が認められた。
 臓器重量は、10000ppm群において、雌雄とも肝臓の絶対及び相対重量が増加した。
 病理組織学的検査では、10000ppm群の肝臓で小葉中心性の肝細胞脂肪化が同群の雌雄全例に認められ、一部では小葉中心部だけでなく全域に微細な肝細胞の脂肪化が認められた。また、同群の雌雄全例に軽度な炎症細胞の集族巣が肝実質内に散見された。2000ppm以下で被験物質に起因する変化は認められなかった。
 以上の結果より本剤の無毒性量は雌雄とも2000ppm(149.5mg/kg/day) と考えられる 1)
(2)遺伝毒性試験
 ネズミチフス菌( Salmonella typhimurium TA98、TA100、TA1535、TA1537、WP2uvrA/pKM101)を用いた復帰突然変異試験は、5mg/plateまで試験されており、代謝活性化の有無にかかわらず陰性であった。 2)
哺乳類培養細胞(CHL/IU)を用いて、最高用量5mg/mlまでの染色体異常試験を行った結果、明確な用量依存性は見られないものの、いずれの処理条件においても細胞毒性の認められる最高用量において、構造異常を有する細胞の増加が認められた。 3)
 マウス(ICR 系雄、7週齢)の骨髄を用いた小核試験は、限界用量である 2000mg/kgラ2 まで試験されており、いずれの用量においても小核の誘発は認められなかった。 4)
 哺乳類培養細胞を用いる染色体異常試験で認められた異常誘発は、細胞毒性が発現する用量のみの反応であり、用量反応関係も明確でない点、軽度ながらもpHの低下が認められた点、及び限界用量まで試験されたげっ歯類を用いる小核試験において陰性であった点を考慮すると、メバロン酸は生体において遺伝毒性を発現するとは考えられなかった。

(引用文献)
1.中江大:厚生労働科学研究費補助金、佐々木研究所
2.及び3.中嶋圓:厚生労働科学研究費補助金、財団法人食品農医薬品安全性評価センター
4.松元郷六:厚生科学研究費補助金、財団法人残留農薬研究所