マスチック

    1.食品添加物名
     マスチック(ヨウニュウコウの分泌液から得られた、マスチカジエノン酸を主成分とするものをいう。)

    2.基原、製法、本質
     ウルシ科ヨウニュウコウ( Pistacia lentiscus LINNE) の分泌液より、低沸点部を蒸留により除去し、熱時エタノールで抽出し、エタノールを留去して得られたものである。主構成成分はマスチカジエノン酸である。

    3.主な用途
     ガムベース

    4.安全性試験成績の概要
    (1)反復投与試験
     F344 ラットに検体 0.22、0.67、2%の濃度で飼料に混入し、90 日間反復投与試験を行った。その結果、動物の死亡は認められず、一般状態及び摂餌量に変化は認められなかった。雄2%群及び雌 0.67%群以上で体重増加抑制が認められた。
     血液学的検査において、雄 2%群において白血球増加と血小板数増加が認められ、血液生化学的検査において、雄0.67%群以上でTP及びALB増加、CRN減少が、雄2%群で Ca 及びALP増加、TG減少が認められた。雌2%群で TP増加、BUN 増加、g -GT増加が、0.67%群以上で TC増加が、0.22%群以上でP 減少が認められた。臓器重量としては、肝臓の実重量が雌雄とも0.67%群以上で増加し、相対重量は雄 0.22%群以上、雌0.67% 群以上で増加した。病理組織学的検索では、雄の肝臓に小肉芽腫及び髄外造血、腎臓に好塩基性尿細管及び硝子滴の沈着、心筋に軽度の炎症性細胞浸潤、雌では肝臓に小肉芽腫及び髄外造血、腎臓に鉱質沈着、心筋に軽度の炎症性細胞浸潤が観察されたが散発性のものであり、群間に差は認められなかった。
     無毒性量は雄0.22%以下、雌0.22%と考えられる。1)
    (2)遺伝毒性試験
     細菌(TA98、TA100、TA1535、TA1537、WP2uvrA) を用いた復帰突然変異試験は、5000 m g/plate まで試験されており、代謝活性化の有無にかかわらず陰性であった。2 )
     哺乳類培養細胞(CHL/IU) を用いて、細胞毒性の認められる濃度まで染色体異常試験を行った結果、代謝活性化系存在下においてのみ統計学的に有意な染色体異常の誘発が認められたが、その出現頻度は6% と低く、また、細胞毒性の認められる用量のみでの反応であった。3)
     マウスの骨髄を用いた小核試験は、限界用量である 2000m g/kg まで試験されており、いずれの用量においても小核の誘発は認められなかった。4 )
     従って、in vitroで認められた染色体異常誘発性はin vivo 試験系においては確認されず、生体にとって特段の問題となるものではないと考える。

    (引用文献)
    1. 鰐渕英機:厚生労働科学研究費補助金、大阪市立大学大学院医学研究科
    2. 安心院祥三:厚生科学研究費補助金、財団法人化学物質評価研究機構
    3及び4. 由中憲穂: 厚生科学研究補助金、財団法人食品薬品安全センター