1.食品添加物名
ホホバロウ(ホホバの果実から得られた、イコセン酸イコセニルを主成分とするものをいう。)
2.基原、製法、本質
ツゲ科ホホバ(
Simmondsia californica NUTT.)の果実より採油したホホバ脂より、分離して得られた高融点ロウ物質である。主成分はイコセン酸イコセニルである。
3.主な用途
ガムベース
4.安全性試験成績の概要
(1)反復投与試験
F344/DuCrj系ラットを用いた混餌投与(0.625、1.25、2.5、5%)による90日反復投与試験を行った。その結果、いずれの群においても、動物の死亡は認められず、一般状態の変化は認められなかった。
体重は、雄では、0.625%及び1.25%群で増加傾向、2.5%及び5%群で抑制傾向が認められたが、雌では被検物質投与群と対照群との間に差は認められなかった。摂餌量は、雄の2.5%以上の群及び雌の0.625%以上の群で減少傾向が認められた。
血液学的検査において、雄の0.625%以上の群でWBCの減少、RBCの増加、Htの増加、MCHの減少、PLTの増加が認められた。雌では、1.25%以上の群でRBC、Hb、Ht、MCV、MCH、MCHCに増加や減少が認められたが、用量相関性もなく、毒性学的な意義は乏しいと考えられた。
血液生化学的検査において、雄では0.625%群でTP及びTCの減少、A/Gの減少、1.25%群でBUNの減少、2.5%群でTC及びNaの増加、BUNの減少、5%群でALP、TC、Crの増加が認められた。雌では0.625%群でALTの減少、1.25%群でA/GとIPの減少、Crの増加、2.5%群でBUN及びCrの増加、5%群でAST、ALT、ALP、BUNの増加が認められた。
雌雄とも肝臓の臓器重量に変化は見られなかった。腎臓については一部の投与群で絶対重量の減少が認められたものの、用量相関性は見られなかった。これら肝と腎に病理組織学的な変化は認められなかった。
その他の臓器重量では、雄では0.625%群で脳の絶対・相対重量の低下、脾臓の絶対重量の増加が、1.25%群で脾の絶対重量の増加、5%群で脳、肺、脾、腎、精巣の相対重量の増加が認められ、雌では5%群で脳の相対重量の増加がみられた。しかしながらこれらはいずれも軽微な変化であった。またこれらについては、病理組織学的にも何ら随伴する異常が認められなかった。
以上より、無影響量(NOEL)は、雄0.625%(294mg/kg/day)、雌0.625%(361mg/kg/day)、無毒性量(NOAEL)は、雄5%(2351mg/kg/day)、雌2.5%(1401mg/kg/day)と考えられた。
1)
(2)遺伝毒性試験
細菌(TA98、TA100、TA1535、TA1537、WP2uvrA)を用いた復帰突然変異試験は、5000μg/プレートまで試験されており、代謝活性化の有無にかかわらず陰性であった。
2)
哺乳類培養細胞(CHL/IU)を用いて、最高処理濃度5.0mg/mLの染色体異常試験を行った結果、いずれの処理条件下においても染色体異常の誘発は認められなかった。
3)
マウス(ICR系、雄)の骨髄を用いた小核試験は、限界用量の2000mg/kgラ2まで試験されており、いずれの用量においても小核の誘発は認められなかった
4)。
(引用文献)
1.田中卓二:平成14年度厚生労働科学研究費補助金、金沢医科大学病理学第一講座
2.安心院祥三:平成13年度厚生科学研究費補助金(厚生科学特別研究事業)既存天然添加物等の変異原性を中心とした安全性研究、(財)化学物質評価研究機構
3.小野宏:平成16年度食品・添加物等規格基準に関する試験検査等について、(財)食品薬品安全センター秦野研究所
4.宮川誠:平成13年度厚生科学研究費補助金(厚生科学特別研究事業)既存天然添加物等の変異原性を中心とした安全性研究、㈱三菱化学安全科学研究所