プロポリス抽出物(376)
食品添加物名
プロポリス抽出物(ミツバチの巣から得られた、フラボノイドを主成分とするものをいう。)
基原、製法、本質
ミツバチ科ミツバチ(Apis spp.)の巣より、エタノールで抽出して得られたものである。主成分はフラボノイドである。
主な用途
酸化防止剤
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安全性試験成績の概要
反復投与試験
F344系ラットを用いた混餌での0.1、0.5及び2.5 %(被験物質はプラジル産プロポリスを原材料として製造されたもの:粉末化剤として可用性澱粉50%添加)投与による26週間及び52週間の反復投与試験を行った。対照群には、可用性澱粉のみを2.5%添加した餌を供した。また、無処置対照群(可用性澱粉無し)を設けた。その結果、いずれの群の動物においても被験物質に関連する死亡は認められず、一般状態、血液学的検査及び病理組織学的検査においても、被験物質に関連する変化は認められなかったが、2.5%群において体重の増加抑制の傾向がみられ、26週の雄で有意な抑制が認められた。
血液生化学的検査では、26週の2:5%群の雄、52週の0.1%以上の群の雄及び 2.5%群の雌でTGの有意な減少が認められた。さらに52週の雄では、0.5%以上でPLの減少と2.5%でTChoの有意な減少が認められた。これらの脂質系検査値の減少はいずれも用量依存的であった。また26週の2.5%群の雄および52週の 2:5%群の雌雄のTGの減少は無処置対照群よりも有意に低く、無処置対照群値の50-60%程度となる著しい減少であった。これらの影響は、体重増加抑制との関連性が示唆されるものの、病理組織学的検査において関連する所見が認められておらず、毒性学的意義は明らかではないが、2.5%群でのTG低下は有害影響である可能性を否定できないと考えられた。
器官重量では、26週において2.5%群の雄で脳、肝臓、精巣及び副腎の相対重量の高値、雌で肝臓の相対重量の高値、牌臓の相対重量の低値が認められた。 52週において2.5%群の雄で脳、腎臓及び精巣の相対重量の高値、雌で脳及び腎臓の相対重量の高値、0.5%以上の群の雌で肝臓の相対重量の高値が認められたが、病理組織学的検査ではいずれの臓器にも検体投与による影響は認められなかった。
以上から、2.5%群の雌雄での有意かつ高度な血清TGの減少等を根拠に無毒性量は雄雌とも0.5%(雄:236.9mg/kg/日、雌:287.9 mg/kg/日)と判断した4)
遺伝毒性試験
細菌(TA98、TAIOO、TA1535、TA1537、WP2uvrNpKMIOI)を用いた復帰突然変異試験は、TA98株(+S9mix)及びTA1537株(+S9mix)で溶媒対照の2倍以上のHis+復帰コロニーを誘発し、用董依存性も示した(0.0125、0.125 mg/plate)。また、再現性も認められたため陽性と判断した。1)
。
ほ乳類培養細胞(CHL/IU)を用いる染色体異常試験は、S9mixの有無に関わらず用量依存性(144、294 µ g!ml)に染色体異常の誘発が認められた。その強さは中等度であった(D2 0.I04 D:!g/ml; TR 218)。2)
マウス(ICR、SPF、雄、各用葦3匹)に水溶液として、500、1000、2000 mg/kgで2回強制経口投与し、骨髄の小核試験を行った。小核を有する多染性赤血球の頻度に有意な増加は認められず、用量依存性も認められなかったことから、陰性と判断した。3)
以上の結果から、in vitroでは遺伝毒性を示すものの、in vivo骨髄小核試験及び発がん性試験の結果を考慮すると、生体にとって特段問題となる遺伝毒性は無いものと考えられる。
発がん性試験
Wistar Hannoverラットを用いた混餌での0.5、2.5 %(被験物質はブラジル産プロポリスを原材料として製造されたもの)投与による2年間発がん性試験では、被験物質の投与に関連する一般状態への影響は認められなかったが、0.5%群の雄及び2.5%群の雌の生存率が対照群に比べ有意に高かった。2.5%群の雌雄で体重の増加抑制が認められたが、被験物質の高濃度含有する飼料での長期飼育による栄養学的な不足の結果である可能性が考えられた。臓器重量では、各投与群とも対照群との間で有意な差は認められなかった。病理組織学的検査では、被験物質の投与に関連した非腫瘍性及び腫瘍性変化の増加は認められず、 2.5%群の雌雄でlymphoma/leukemiaの発生率の有意な減少が、0.5%群の雄及び
2.5%群の雌で下垂体腫瘍の発生率の有意な減少が認められた。なお、雌の投与群で甲状腺c細胞腺腫の発生が有意に増加したが、既存の背景データにおいてC
細胞腺腫が10%程度に発生している報告があり、今回の試験では対照群の雌に発生が観察されなかったために、有意差が出たものと考えられた。
以上から、プロポリス抽出物には発がん性はないと判断された。5)
(引用文献)
兒嶋昭徳:食品添加物規格基準作成等の試験検査、名古屋市衛生研究所
望月信彦:食品添加物規格基準作成等の試験検査、(財)食品農医薬品安全性評価センター
岩本毅:食品添加物安全性再評価等の試験結果、(財)残留農薬研究所
菅野純:F344ラットによるプロポリスの1年間反復投与毒性試験法による長期投与効果、国立医薬品食品衛生研究所安全性生物試験研究センター毒性部
鰐渕英機:平成1 7年度厚生労働省科学研究補助金、天然添加物の発がん性等に関する研究
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