フィチン(抽出物)
英名: Phytin (extract)
CAS No. -
JECFA No. -
別名: フィチン
構造式: -
基原・製法
イネ科イネ(Oryza sativa LINNE)の種子より得られた米ぬか又はイネ科トウモロコシ
(Zea mays LINNE)の種子より、室温時水で抽出して得られたものである。主成分はイノシトールヘキサリン酸マグネシウムである。
主な用途
製造用剤(酸化防止、キレート剤)
安全性試験の概要
フィチンはイノシトールヘキサリン酸マグネシウム(CAS 3615-82-5)として RTECS に掲載されているが、毒性情報はみられない 1。
類似物質として、フィチン酸2は、イネ(Oryza sativa L.)の種子から得られた米ぬか又はトウモロコシ(Zea mays L.)の種子から水又は酸性水溶液で抽出し、精製して得られたイノシトールヘキサリン酸を主成分とするものである 2)。 本品には液体品及び粉末品があり、粉末品は、デキストリン又は還元水飴を含むことがある 2)。
マウスにおけるフィチン酸及びフィチン酸ナトリウムの経口急性毒性を検討した結果、フィチン酸の LD50 は雄で 900 mg/kg 体重、雌で 1,150 mg/kg 体重、フィチン酸ナトリウムは雄で 1,030 mg/kg 体重、雌で 2,750mg/kg 体重であり、雌ではフィチン酸ナトリウムのLD50 は高いことが報告されている 3)。
ラットにおけるフィチン酸及びフィチン酸ナトリウムの経口急性毒性を検討した結果、フィチン酸の LD50 は雄で 405~500 mg/kg 体重、雌で 480 mg/kg 体重、フィチン酸ナトリウムは雄で 1,030~1,130 mg/kg 体重、雌で 1,672~1,200 mg/kg 体重であり、LD50 値はフィチン酸ナトリウムの方が高いことが報告されている 4)。
反復投与に関する情報なし
2 フィチン酸のマグネシウム塩やナトリウム塩は、胃内のような低 pH においては酸と金属イオンに解離するものと考えられる。
フィチン酸として、
ネズミチフス菌(TA98, TA100, TA1535, TA1537, TA92、TA94)を用いた復帰突然変異試験は±S9mix で陰性(最高用量 10 mg/plate、50%水溶液)。培養細胞
(CHL)を用いた染色体異常試験は±S9mix で陰性(最高用量 2.0 mg/mL、50%水溶液)。マウス(ddY)を用いた骨髄小核試験は陰性(60 mg/kg、単回腹腔内投与もしくは 30 mg/kg 体重 X4 回、腹腔内投与)2)。
食品添加物公定書の規格
規格なし
結論
フィチン(抽出物)は、主成分がイノシトールヘキサリン酸マグネシウムであり、基原、製法及び本質、入手可能な安全性試験(変異原性、その他の情報)に鑑みてヒトの健康影響に対する懸念はないものと結論された。
参考資料
RTECS Number: NM7530000
第 9 版食品添加物公定書解説書 2019
藤谷知子: フィチン酸及びフィチン酸ナトリウムのマウスに対する急性毒性, 東京都立衛生研究所研究年報. 1987; 38: 368-370.
フィチン酸ならびにフィチン酸ナトリウムのラットにおける経口急性毒性, 東京都立衛
生研究所研究年報. 1987; 38: 371-376.