ヒアルロン酸


1.食品添加物名
 ヒアルロン酸 (Hyaluronic acid)

2.基源・製法・本質
 鶏冠より、微温時~温時水、アルカリ性水溶液若しくは酸性水溶液で抽出し、エタノール若しくは含水エタノールで処理、若しくは酵素処理した後エタノール若しくは含水エタノールで処理し、精製して得られたもの、又は細菌(Streptococcus zooepidemicus)の培養液を、冷時~温時、除菌し、エタノール若しくは含水エタノールで処理し、精製して得られたものである。成分はヒアルロン酸である。

3.主な用途
 製造用剤

4.安全性試験成績の概要
(1)単回投与試験
 急性経口LD50はマウス、ラット及びウサギでそれぞれ 2,400mg/kg 超、800mg/kg超、1,000mg/kg超と考えられる1)

(2)反復投与試験
 SDラットを用いた腹腔内(15、30、60mg/kg)投与による3ヶ月間の反復投与試験において、60 mg/kg投与群の雄で総蛋白の減少、30及び60mg/kg投与群の雄で赤血球の減少とMCH、MCVの上昇がみられたが、いずれも35 日間の休薬により回復した。腹腔内投与による無毒性量は15mg/kg/dayと考えられる2)
 ビーグル犬を用いた膝関節腔内(2、6、12mg/kg)週2回投与による6ヶ月間の反復投与試験において、検体投与に起因する毒性学的影響は認められていない。膝関節腔内投与による無毒性量は12mg/kg/dayと考えられる3)

(3)生殖発生毒性試験
 SDラットを用いた皮下(8、20、50mg/kg)投与による胎児の器官形成期投与試験、妊娠前及び妊娠初期投与試験、周産期及び授乳期投与試験並びにニュージーランドホワイトウサギを用いた皮下(8、20、50mg/kg)投与による胎児の器官形成期投与試験のいずれにおいても、検体投与に起因する毒性学的影響は認められていない。無毒性量はいずれの試験においても50mg/kg/dayと考えられる6),7),8),9)

(4)変異原性試験
 細菌を用いた復帰変異試験4)、哺乳類培養細胞を用いた染色体異常試験4)及びマウスを用いた小核試験5)の結果は、いずれも陰性と判断される。

(5)その他の毒性試験
 マウス、モルモットを用いた抗原性試験において、PCA反応、能動全身性アナフィラキシー反応はいずれも陰性と認められている10)

(引用文献)
1.長野聖ら: Sodium Hyaluronate (SPH)の急性毒性試験, 薬理と治療, 2(12), 37-45, 1984
2.長谷川隆司ら: Sodium Hyaluronate (SPH)のラットにおける3ヶ月間腹腔内投与による亜急性毒性試験および回復試験, 応用薬理, 28(6), 1021-40, 1975
3.三好幸二ら: Sodium Hyaluronate (SPH)のビーグル犬における6ヶ月間膝関節腔内投与による慢性毒性試験および回復試験(1)全身所見, 応用薬理, 29(1), 49-81, 1985
4.大西端男ら: ヒアルロン酸ナトリウム(SH)の変異原性試験, 薬理と治療, 20(3), 65-72, 1992
5.有賀文彦ら: ヒアルロン酸ナトリウム(SH)のマウスを用いる小核試験, 薬理と治療, 20(3), 73-75, 1992
6.小野千鶴子ら: ヒアルロン酸ナトリウム(SH)の生殖・発生毒性試験(1)‐ラットにおける皮下投与時の胎児の器官形成期投与試験‐, 薬理と治療, 20(3), 11-26, 1992
7.小野千鶴子ら: ヒアルロン酸ナトリウム(SH)の生殖・発生毒性試験(2)‐ラットにおける皮下投与時の妊娠前および妊娠初期投与試験‐, 薬理と治療, 20(3), 27-35, 1992
8.小野千鶴子ら: ヒアルロン酸ナトリウム(SH)の生殖・発生毒性試験(3)‐ラットにおける皮下投与時の周産期および授乳期投与試験‐, 薬理と治療, 20(3), 37‐50, 1992
9.小野千鶴子ら: ヒアルロン酸ナトリウム(SH)の生殖・発生毒性試験(4)‐ウサギにおける皮下投与時の器官形成期投与試験‐, 薬理と治療, 20(3), 51-58, 1992
10.竹本 稔ら: Sodium Hyaluronate (SH)の抗原性試験, 薬理と治療, 20(3), 59-64, 1992