パーオキシダーゼ

英名: Peroxidase CAS No. 9003-99-0

JECFA No. 該当なし別名: 該当なし

構造式: -


  1. 基原・製法

    キュウリ(Cucumis sativus L.)、セイヨウワサビ(Armoracia rusticana P. Gaertn.及びB. Mey. & Scherb.)、ダイコン(Raphanus sativus L.)若しくはダイズ(Glycine max (L.) Merr.)、又は担子菌(Coprinus cinereus)、糸状菌(Alternaria 属、Aspergillus oryzae 及び Oidiodendron 属に限る)、放線菌(Streptomyces thermoviolaceus 及び Streptomyces violaceoruber に限る)若しくは細菌(Bacillus 属に限る)の培養物から得られた、過酸化水素を還元分解する酵素である。食品(賦形、粉末化、希釈、安定化、保存又は力価調整の目的に限る)又は添加物(賦形、粉末化、希釈、安定化、保存、pH 調整又は力価調整の目的に限る)を含むことがある。


  2. 主な用途

    酵素


  3. 安全性試験の概要

    1. 急性毒性試験

      経口投与の情報なし


    2. 反復投与毒性試験

      Wistar ラット(雌雄各群 10 匹)に遺伝子修飾 Aspergillus niger 由来パーオキシダーゼ(tox-batch: DBL.GRZ.0914)を 00.7%、2%及び 4(61735 mg TOS あるいは 4571,3062,611 DBLU/g 飼料相当)の用量で 90 日間混餌投与したところ,被験物質に起因する毒性影響はみられず、NOAEL 2,300 mg/kg 体重/日(約 2,000 mg TOSあるいは 150,000 DBLU/kg 体重/日)と考えられた 1)


    3. 変異原性試験

      Ames 試験及び染色体異常試験が実施されており、全て陰性と報告されている 2)


      Ames 試験:陰性;TA100TA1535WP2uvrATA98TA1537 625,000 g/plate

      (代謝活性化および非代謝活性化)

      染色体異常試験:陰性;ヒトリンパ球、6255,000 g/mL(代謝活性化および非代謝活性化)


    4. その他

      毒性が懸念される報告はない。


    5. 海外評価書における扱い

      米国FDA は、DSM からのデータ 1)に基づき、2012 年に遺伝子修飾 Aspergillus niger

      由来パーオキシダーゼについて、現在の使用においては GRAS であるとしている 2。 欧州食品安全機関 EFSA は、大豆の外皮由来の食品用酵素のパーオキシダーゼの安全

      性評価に関して、科学的的意見書を公表した 3)。当該パーオキシダーゼは、ベーキング工程に使用することを意図している。最大推奨使用レベルに基づき、食品用酵素の総有機固形物(TOS)への摂食由来のばく露量を、EFSA の包括的欧州食品摂取データベースの個々のデータを基にして推定した。この推定ばく露量は、全大豆由来の食品の摂取量の結果から、食品用酵素の TOS に相当する大豆の分画へのばく露量よりもおおよそ一桁低い。当該食品用酵素は、大豆の食用部分由来のため、食品用酵素の評価に関する指針書の必要条件に合致して、「食品接触材料、酵素、香料及び加工助剤に関する科学パネル」(CEF パネル)は、毒性学的データの提供は不必要であると結論付けた。

      アレルゲンの可能性は、Uniprot(訳注:たん白質の配列と機能に関する情報を提供するデータベース)のデータベースで検索した大豆のパーオキシダーゼのアミノ酸配列と既知のアレルゲンのアミノ酸配列間の類似性を検索することにより評価し、合致するものは見出されなかった。大豆の外皮由来のパーオキシダーゼは、アレルゲンのデータベースにおいて、アレルゲンとして記載されていない。しかしながら、幾つかの大豆及び大豆の外皮のたん白質は、呼吸器系又は食品のアレルゲンとして知られている。

      大豆の食用部位由来の当該食品用酵素の起源、製造工程、提供された組成及び生化学データ並びに推定摂取量に基づき、CEF パネルは、当該食品用酵素が意図した使用条件下では安全性の懸念を引き起こさないと結論付けた。しかしながら、当該食品用酵素は、アレルギーを引き起こす大豆たんぱく質を含んでいる可能性があり、従って、大豆アレルギーに感受性の高い人においては、有害な反応が排除できないことに CEF パネルは留意し4)

  4. 結論

    基原にダイズが含まれているため、アレルゲンの可能性は考えられるが、現状の使用において、ヒト健康影響に対する安全上の懸念は認められなかった。


  5. 参考資料

  1. DSM (2011) Unpublished report submitted to FDA, United States.


  2. FDA (2012): Agency response letter GRAS notice No. GRN 000402, https://wayback.archive- it.org/7993/20171031002315/https://www.fda.gov/Food/IngredientsPackagingLabelin g/GRAS/NoticeInventory/ucm332201.htm#main


  3. EFSA Panel on food contact materials, enzymes, flavourings and processing aids (2017) Safety evaluation of the food enzyme peroxidase obtained from soybean (Glycine max) hulls. EFSA Journal, 15 (12), 5519. http://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/5119

  4. 食品安全委員会:食品安全関係情報 syu04850090149, (2017) http://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/show/syu04850090149