デキストラン
基本情報
英名: Dextran
CAS No.: 9004-54-0
JECFA No.: 該当なし
別名: Dextran 1, 2, 5, 10, 11, 40, 70, 110, Polyglusol
構造式: -
1.基原・製法
細菌(Leuconostoc mesenteroides 又は Streptococcus equinus に限る)の培養液から分離して得られたものである。成分は、デキストランである。
2.主な用途
増粘安定剤
3.流通実態
令和 3 年度における日添協等を対象とした生産量調査では、製造量及び出荷量は
4,100 kg であった(令和 2 年度実績)1)。
4.安全性試験の概要
ラット 経口 | LD50 | >3,000 mg/kg 2, 3) |
マウス 経口 | LD50 | >12,000 mg/kg 2, 3) |
雄 1 群で 1 用量の検討であること等、限定的な情報として、離乳期の雄性アルビノラット(6 例)に、デキストランを 15%の用量で 62 日間混餌投与し、摂餌量と体重を測定した結果、摂餌量及び体重への影響は認められず、下痢症状等も認められなかったとの報告が認められた 4, 5)。
復帰突然変異試験、染色体異常試験及び小核試験の結果は、いずれも陰性であった
6)。
発がん性試験
デキストラン(MW 21500)を ACI ラット雌雄に 2.5%の用量(概算として約 1,000 mg/kg 超)で 480 日間混餌投与した結果、デキストランに起因する腫瘍性病変は認められず、デキストランに発がん性はないと報告されている 7, 8)。
米国では、デキストランを含め食品としての使用がない複数の物質について GRAS物質リストからの消除することがFDA より提案され、デキストランについては 1977年に食品成分としての使用においては GRAS 物質リストから削除された。なお、食品の包装材等での間接的な使用においては、GRAS ステータスは維持されている 9, 10, 11)。
欧州委員会の SCF(Scientific Committee on Food)は、2000 年に、Leuconostoc mesenteroides, Saccharomyces cerevisiae 及び Lactobacillus spp.が生成するデキストランについて、ベーカリー製品の新規食品成分として 5%の使用までは安全性に懸念はないと評価している 5)。
5.検討結果のまとめ
デキストランについては、入手可能な安全性情報である反復投与試験や発がん試験において安全性上懸念される所見は認められておらず、これらの試験で用いられた用量と比べ、本邦の流通実態から推定される推定摂取量は約 1.28µg/kg/日(4,100,000,000 mg×0.8/365 日/127,000,000 人/55.1kg)と十分低い。また、遺伝毒性の懸念も認められておらず、本邦及び海外での使用状況も踏まえると、食品添加物としての現状の使用においては、ヒトの健康影響に対する懸念はないものと結論された。
6.参考資料
佐藤恭子:食品添加物の生産量統計調査を基にした摂取量の推定に関わる研究
その 2 既存添加物品目、令和 3 年度厚生労働科学研究費補助金(食品の安全確保推進研究事業)「食品添加物の安全性確保に資する研究」分担研究「食品添加物の摂取量推計及び香料規格に関する研究」、2022
入倉勉、玉田輝己、岡田孝道、石田了三、工藤善隆、神田和実:代用血漿剤 Hydroxyethyl Starch 溶液 (HESPANDER) の研究(第 6 報). 応用薬理 6:1023-1030、1972
RTECS Number: HH9247500
Booth A. N, Hendrickson A. P and DeEds F: Physiologic effects of three microbial polysaccharides on rats. Toxicol. Appl. Pharmacol. 5:478-484. 1963
European Commission, Scientific Committee on Food: Opinion of the Scientific Committee on Food on a dextran preparation, produced using Leuconostoc mesenteroides, Saccharomyces cerevisiae and Lactobacillus spp, as a novel food ingredient in bakery products. Expressed on 18 October 2000
第 9 版食品添加物公定書解説書 2019
Hirono I, Kuhara K, Yamaji T, Hosaka S and Golberg L: Carcinogenicity of dextran sulfate sodium in relation to its molecular weight. Cancer Lett.; 18: 29-34. 1983
CCRIS Record Number: 2469
Federal Register: Affirmation of GRAS status as indirect Human Food Ingredients and Deletion of GRAS Status as Direct Human Food Ingredients. Vol. 42, No 223, 59518-59521. 1977
Federal Register: Indirect Food Substances affirmed as GRAS, Dextrans (Average Molecular Weight Below 100,000). Vol. 43, No. 131, 29287. 1978
FDA: Code of Food Regulations, 21 CFR 186.1275