ステビア抽出物


1.食品添加物名
 ステビア抽出物 (Stevia extract)

2.基原・製法・本質
 キク科ステビア (Stevia rebaudiana BERTONI)の葉より、室温時~熱時水で抽出し、精製して得られたものである。主甘味成分はステビオール配糖体(ステビオシド及びレバウジオシド等)である。

3.主な用途
 甘味料

4.安全性試験成績の概要
(1)単回投与試験
 ステビオシドの急性経口LD50はラットで 8,200mg/kg超、マウスで 8,200mg/kg超である1),2)
 ステビオシド精製エキス(ステビオシド含量 41.4%)の急性経口LD50は、マウスで42,000mg/kg超である1)
 ステビオシド粗結晶(ステオビシド含量 93~95%)の急性経口LD50は、マウスで15,000mg/kg超である3)

(2)反復投与/発がん性試験
 F344ラットを用いたステビオシドの混餌(2.5、5%)投与による104週間の反復投与/発がん性試験において、投与量に相関した体重増加抑制、腎臓及び卵巣重量の減少が認められたが、カロリー制限による影響と思われ、毒性学的影響とは考えられない発がん性は認められていない4)
 F344 ラットを用いたステビオシドの混餌(0.31、0.62、1.25、2.5、5.0%)投与による 13 週間の反復投与試験において、2.5%以上の投与群の雌及び5%投与群の雄で体重増加抑制が認められている。無毒性量は0.6g/kg/dayと考えられる5)
 Wistar ラットを用いたステビオシドの強制経口(100、500、2,500mg/kg)投与による1ヶ月間の反復投与試験において、2,500mg/kg 投与群で肝臓重量の減少、肝細胞の肥大、脾臓のリンパ濾胞の腫大が認められている。無毒性量は500mg/kg/dayと考えられる。2)
 F344 ラットを用いたステビア抽出物(ステビオシド:74.54%、レバウディオシドA:16.27%)の混餌(0.1、0.3、1.0%)投与による22ケ月間(雄)/24ヶ月間(雌)の反復投与毒性試験において、6ヶ月目に尿検査、血液学的検査、血清生化学的検査及び臓器重量に軽微な変化が認められているが、12ヶ月以降では毒性学的影響は消失している。また、検体投与に起因する腫瘍発生は認められていない6)。無毒性量は550mg/kg/dayと考えられる。

(3)催奇形性試験/繁殖試験
 Wistar ラットを用いた妊娠6~15 日間の強制経口(250、500、1000mg/kg)投与による催奇形試験において、検体投与に起因する毒性学的影響は認められておらず、催奇形性も認められていない。無毒性量は1,000mg/kg/dayと考えられる12)
 SDラットにステビア粗エキス、精製エキス、又はステビオサイド結晶を21日間混餌(0.69、0.35、0.15%)投与した後、雌雄を交配させて妊娠への影響を調べた結果、妊娠率、出産仔数、親動物及び新生仔の体重などに異常は認められない3)
 Wistarラットを用いたステビオシドの混餌(0.15、0.75、3.0%)投与による妊娠前及び妊娠初期投与試験を行った。雄交配前 60 日間、雌交配前 14 日間、交配後7日間の投与を続けた結果、交配率、妊娠率、胎児に異常は認められていない14)
 Wistar ラットを用いてステビアの乾葉の熱水抽出液を飲水として1匹あたり15~20g/日投与により 12 日間摂取させ妊娠抑制作用を調べた結果、出産率及び出産仔数への影響は認められていない15)
 ゴールデンハムスターを用いたステビオシドの強制経口(0.5、1.0、2.5g/kg)投与による3世代の繁殖試験を行った結果、成長、生殖機能及び生殖器の組織学的検査において異常は認められていない17)
 Wistar ラットを用いたステビオシド(100、500、2,000mg/kg)及びステビア乾葉エキス(700、2,100mg/kg)の強制経口投与による妊娠前及び妊娠初期投与試験を行った。雄交配前約60日間、雌交配前14日間及び交配後7日間の投与を続けた結果、ステビオシド2,000mg/kg投与群において妊娠率の軽度の低下が認められている。ステビオシドの他の用量の投与群及びステビア乾葉エキス投与群では、妊娠率について対照群との間に有意差は認められていない。いずれの検体も性周期、交配率、胎児への影響は認められていない18)
 なお、雌ラットにステビアの葉及び茎の抽出物の5%液10ml を 12 日間摂取させた後、無処置の雄と交配させて雌受胎後へ及ぼす影響を調べた結果、受胎率及び出産仔数の低下が認められたとの報告もある13)

(4)変異原性試験
 純度 50%ステビオシドについての細菌を用いた復帰変異試験では陽性との報告7)があるが、純度50%、85%のステビオシドでは陰性の結果が得られている 7),8),9),10)。ステビア結晶(95~98%)についての細菌を用いた DNA修復試験では陰性の結果が得られている8)。また、純度85%ステビオシドについての細菌を用いた前進突然変異試験、DNA 損傷試験(Umu test)及び哺乳培養細胞を用いた染色体異常試験の結果は、いずれも陰性と判断される9),10)
 ステビオシドのラット腸内細菌での代謝産物ステビオールは、細菌を用いた前進突然変異試験、細菌を用いた DNA 損傷試験及び哺乳類培養細胞を用いた染色体異常試験において、S9mix存在下で陽性であった9),11)。一方、ステビオールは細菌を用いた復帰変異試験、細菌を用いたDNA修復試験並びにマウスを用いた小核試験の結果は、いずれも陰性と判断される9),11)

(引用文献)
1.ステビア懇話会, ステビオサイドの安全性について, 1978 (昭和53年)
2.片山脩ほか: ステビア実用化と研究開発データ, アイエスユー(株), 1976
3.明石春雄ほか: ステビアの乾葉抽出物の安全性について, -各種毒性試験結果の報告- 食品工業, 1975. 10月
4.K. TOYODA et al: Assessment of the Carcinogenicity of Stevioside in F344 Rats, Food and Chemical Toxicology, 35(6), 597-603, 1997
5.阿瀬善也ほか: Steviosideのラットを用いた亜慢性毒性試験, 衛生試験所報告, 109, 48ページ, 1991
6.A. Yamada et al: Chronic Toxicity Study of Dietary Stevia Extracts in Fisher 344 Rats, 食品衛生学雑誌, 26(2), 169-183, 1985
7.石館 基ほか: 食品添加物の変異原性試験成績, -昭和54年度厚生省試験研究による第一次スクリーニングデータ(第一回)-, 変異原と毒性, 第12集, 82-90, 1980
8.奥村昌也ほか: ステビオサイドの修復試験および復帰変異試験, 食品衛生学雑誌, 19(5), 486-490, 1978
9.松井道子ほか: Steviolによる突然変異誘発機構に関する研究, -Southernblotting法による解析-, 衛生試験所報告, 第107号, 83-87, 平成元年 (1989)
10.松井道子ほか: 日本環境変異研究, Vol.8(3), 65 (1985)
11.義平邦利ほか: ステビオサイドの最近の話題, トキシコロジーフォーラム, Vol.10(3), 281-289, 1987
12.宇佐見 誠: ステビオサイドのラットを用いた催奇形性試験, 衛生試験所報告, 113, 31ページ, 1995
13.G. M. Planas: Contraceptive Properties of Stevia rebaudiana, Science, 162, 1007, 1968
14.森 規子ほか: ステビオサイドのラットによる妊娠前および妊娠初期混餌投与試験,食品衛生学雑誌, 22(5), 409-414, 1981
15.ステビア工業会, ラットにおけるステビア乾葉抽出物の妊娠抑制効果について, 1996. 6
16.L. Xili, et al., Chronic oral toxicity and carcinogenicity study of stevioside in Rats, Fd Chem. Toxic. Vol.30, No.11, p.957-965, 1992
17.V. Yodyingyuad, et al., Effect of stevioside on growth and reproduction, Human Reproduction, Vol.6, No.1, p.158-165 (1991)
18.新保幸太郎ほか、ステビア葉およびステビオサイドの妊娠試験, 1978