カテキン

1.食品添加物名
 カテキン

2.基原・製法・本質
 ツバキ科チャ( Camellia sinensis O.KZE)の茎若しくは葉、マメ科ペグアセンヤク( Acacia catechu WILLD.)の幹枝又はアカネ科ガンビール( Uncaria gambir ROXBURGH)の幹枝若しくは葉より、乾留した後、水又はエタノールで抽出し、精製して得られたもの、又は熱時水で抽 出した後、メタノール若しくは酢酸エチルで分配して得られたものである。成分はカテキン類である。

3.主な用途
 酸化防止剤

4.安全性試験成績の概要
(1) 90 日間反復投与試験
 F344/DuCrjラットを用いた混餌(0.3、1.25、5.0%)投与による90日間の反復投与試験において、雄の5%群では体重増加抑制、血清ALTとALPの高値、肝臓及び腎臓の相対重量の増加が認められた。また、1.25%以上の群で甲状腺の相対重量の低下、0.3%以上の群で血清T-Choの低下がみられたが、毒性学的意義は乏しいと考えられた。一方、雌の5%群では血清AST、ALT及びALPの高値、肝臓、腎臓及び甲状腺の相対重量の増加が認められ、1.25%以上の群で甲状腺の実重量が軽度に増加した。
無影響量は、雄で0.3%未満(179.9mg/kg/day)、雌で0.3%(188.5mg/kg/day)、無毒性量は雌雄で1.25%(雄 763.9mg/kg/day、雌 820.1mg/kg/day)と考えられた。1)

(2)遺伝毒性試験
 細菌を用いた復帰突然変異試験では、TA98株に対してS9mix存在下3.2倍の復帰変異コロニーを誘発し、かつ濃度依存性を示したことから陽性と判断される。2)、3)
 哺乳類培養細胞を用いた染色体異常試験では、72時間連続処理及びS9mixを加えない短時間処理法で陽性を示した。2)、4)
 マウス(ICR系、雄)の骨髄を用いた小核試験では、限界用量である2000 mg/kg×2まで試験されており、いずれの用量においても小核を有する多染性赤血球の頻度に有意な増加は認められず、また、全赤血球に対する多染性赤血球の割合に有意な減少は認められなかったことから、陰性と判断される。2)、5)
以上の結果から、 in vitro では遺伝毒性を示すものの、 in vivo 骨髄小核試験及び発がん性試験の結果を考慮すると、生体にとって特段問題となる遺伝毒性は無いものと考えられる。

(3)1年間反復投与毒性/発がん性併合試験
 Wistar Hannoverラットを用いた混餌(0.02、0.3、1.0、3.0%)投与による1年間反復投与毒性試験では、被験物質の投与に関連する死亡及び一般状態への影響は認められなかった。3.0%群の雌で体重の増加抑制傾向が認められた。血液学的検査では、雌の3.0%群で単球の増加を認めた。血液生化学的検査では、雌では3.0%群でA/G比の増加が認められた。臓器重量では、雄3.0%群で肝相対重量の増加が認められた。病理組織学的検査では、3.0%群の雄で小葉中心性肝細胞肥大の増加が認められ、肝におけるcytocrhome P450系酵素(CYP)の誘導を免疫組織化学染色で確認したころ、同群の肝細胞肥大に一致してCYP3A2発現の増強が認められた。なお、肝細胞増殖活性と肝前がん病変(GST-P陽性巣)の増加は認められなかった。
 Wistar Hannoverラットを用いた混餌(0.02、0.3、1.0、3.0%)投与による2年間発がん性試験では、被験物質の投与に関連する死亡及び一般状態への影響は認められなかった。3.0%群の雌雄では体重の増加抑制傾向が認められた。肝重量測定では、実重量及び相対重量の増加は認められなかった。病理組織学的検査では、3.0%群の雄で肝細胞肥大の増加が認められた。腫瘍発生については、対照群と3.0%群の比較で、被験物質の投与に関連した増加は認められず、腫瘍発生の早期化、悪性度の増強なども認められなかった。
 両試験における3.0%群の体重増加抑制は、その他の検査項目で投与に関連した明らかな毒性所見が認められないことから、3.0%という高濃度含有飼料での長期飼育による栄養学的不足の結果であると考えた。また、3.0%群の雄に認められた肝臓の変化は、肝障害を示唆する所見は観察されず、CYP3A2の発現が増加したことから、薬物代謝酵素誘導による適応性の変化であり、毒性変化ではないと考えた。
以上から、無影響量は、雄で1.0%(416.44mg/kg/日)、雌で3.0%(1539.80mg/kg/日)、無毒性量は雌雄で3.0%(雄 1265.77mg/kg/日、雌 1539.80mg/kg/日)と考えられる。6)


(引用文献)
1.広瀬雅雄:平成13年度食品添加物規格基準設定等試験検査、国立医薬品食品衛生研究所病理部長
2.林真:厚生省等による食品添加物の変異原性評価データシート(昭和54年度~平成10年度分)
3.宮部正樹:平成7年度食品添加物安全性評価等の試験検査、名古屋市衛生研究所
4.祖父尼俊雄:平成7年度食品添加物安全性再評価等の試験、国立衛生試験所安全性生物試験研究センター変異遺伝部
5.栗田年代:平成7年度食品添加物安全性再評価等の試験検査、財団法人残留農薬研究所
6.中江大:平成17年厚生労働科学研究費補助金、天然添加物の発がん性等に関する研究