カカオ色素
1.食品添加物名
カカオ色素(Cacao colour)
2.基原・製法・本質
アオギリ科カカオ(Theobroma cacao
LINNE)の種子(カカオ豆)を発酵後、培焼したものより、温時弱アルカリ性水溶液で抽出し、中和して得られたものである。主色素はアントシアニンが熱により重合したものである。褐色を呈する。
3.主な用途
着色料
4.安全性試験成績の概要
(1)単回投与試験
急性経口LD50はマウスで10,000mg/kg超、ラットで5,000mg/kg超と考えられる1),2)。
(2)反復投与/発がん性試験
SDラットを用いた強制経口(500、1,000、2,000、4,000mg/kg)投与による5週間の反復投与試験において、検体投与に起因する毒性学的影響は認められていない。無毒性量は4g/kg/dayと考えられる2)。
SD ラットを用いた混餌(0.05%、5%)投与による 104
週間の反復投与試験及び発がん性試験において、検体投与に起因する毒性学的影響及び発がん性は認められていない。無毒性量は2.5g/kg/dayと考えられる2)。
(3)変異原性試験
細菌を用いた復帰変異試験では、5mg/plate
以上の高用量で陽性3)、弱陽性4)と判断された報告がある。また、ロットによって異なる結果が得られたとの報告5)もある。細菌を用いたDNA修復試験においてもロットによって異なる結果が得られ、15mg/diskという高用量で陽性の結果が得られている5)。培養細胞を用いた染色体異常試験においても異なるロットについて試験が行われ、比較的高用量(D20値が
0.7~1.83mg/ml)で陽性の結果が得られている3),5),6)。マウスを用いた小核試験では、統計的に有意差のある結果が得られたが、その出現頻度は非常に低い(0.28%)もので7)、別のロットでは陰性の結果が得られている8)。
(引用文献)
1.清水充ら:
化学的合成品以外の食品添加物のマウス及びラットにおける急性経口毒性について, 生活衛生 37(5), 215‐220, 1993
2.昭和61年度厚生省委託試験
3.石館基ら: 食品添加物の変異原性試験成績
(その2) -昭和55年度厚生省試験研究による第一次スクリーニングデータ-, 変異原と毒性, 4(6), 80-89, 1981
4.藤田博ら: 天然食品添加物のAmes試験における変異原性, 東京都立衛生研究所研究年報,
47, 309-313, 1996
5.石館基ら: 食品添加物の変異原性試験成績 (その7) -昭和60年度厚生省試験研究による第一次スクリーニングデータ-, トキシコロジーフォーラム, 9(6), 628-633,
1986
6.石館基ら: 食品添加物の変異原性試験成績-昭和54年度厚生省試験研究による第一次スクリーニングデータ (第一回)-, 変異原と毒性, 第12集 82-90, 1980
7.蜂谷紀之ら:
天然添加物の急性毒性および各種変異原性試験成績の概要 (昭和56-58年), トキシコロジーフォーラム, 8(1), 91-105, 1985
8.蜂谷紀之ら: 天然添加物についての小核試験, 変異原性試験, 1(1),
13-17, 1992