オリゴガラクチュロン酸

英名: Oligogalacturonic acid CAS No. 該当なし

JECFA No. 該当なし別名: 該当なし

化学式: -

分子量: -

構造式: -


1.基原・製法

「ぺクチン」をペクチナーゼで酵素分解し、限外ろ過して得られたものであって、ガラクチュロン酸の 19 量体の混合物からなる。

2.主な用途

製造用剤(清涼飲料水、粉末・濃縮飲料等の沈殿防止、清涼飲料水、調味液等の比重・食感調整、そうざい、液体食品等の日持向上剤)

3.流通実態

1)消除対象1

消除対象から復活2


2)流通実態

日添協等を対象とした平成 26 1)、平成 29 2)における生産量調査において報告なし

3)食品添加物公定書の規格規格なし

4.安全性試験の概要

1)急性毒性試験

急性毒性試験として経口投与の情報なし


1 「消除予定添加物名簿の作成に係る既存添加物の販売等調査について(周知依頼)」(平成 29 12

22 日付け薬生食基発 1222 第1号)の別添 1「食品添加物として販売の用に供されていない既存添加物(案)(196 品目)」に収載

2 一度消除候補となったが、その後使用していることの申出があったことから、消除候補から除かれた。

2)反復投与毒性試験

6 週齢の雌雄 Crl:CD(SD)ラットにオリゴガラクチュロン酸を 01003001000 mg/kg 体重/日の用量で 91 日間強制経口投与(媒体:蒸留水)し、一般状態観察、体重測定、摂餌量測定、尿検査、血液学的検査、血清生化学検査、臓器重量測定、肉眼病理学的検査及び病理組織学的検査を実施した。その結果、いずれの検査項目においても被験物質投与による毒性影響は認められなかった。よって、本試験条件下におけるオリゴガラクチュロン酸の NOAEL は雌雄ともに 1000 mg/kg 体重/日以上と判断された 3)

3)遺伝毒性試験

オリゴガラクチュロン酸の細菌を用いる復帰突然変異試験をプレインキュベーション法により実施し、遺伝子突然変異誘発性(変異原性)の有無を検討した。溶媒は注射用水(溶解)とし、純度換算は行わなかった。検定菌として、ネズミチフス菌

TA100TA1535TA98TA1537)及び大腸菌(WP2 uvrA)を用い、プレインキュベーション法により、非代謝活性化及び代謝活性化条件下で試験を行った。

用量設定試験の結果に基づき、全ての検定菌で 31362512502500 及び 5000 µg/plate 5 用量を設定して本試験を行った。その結果、生育阻害は、非代謝活性化及び代謝活性化条件下のいずれの検定菌においても認められなかった。陰性対照値の 2 倍以上となる変異コロニー数の増加は、非代謝活性化及び代謝活性化条件下のいずれの検定菌においても認められなかった。

以上の結果に基づき、オリゴガラクチュロン酸は、用いた試験系において遺伝子突然変異誘発性を有しない(陰性)と判定した 4)


オリゴガラクチュロン酸について、CHL/IU 細胞(チャイニーズ・ハムスター、雌 肺由来)を用いる染色体異常試験を実施し、染色体異常誘発作用の有無を検討した。溶媒は注射用水(溶解)とし、純度換算は行わなかった。短時間処理(6 時間処理及び 18 時間の回復時間)の非代謝活性化及び代謝活性化条件下並びに連続処理(24 時間処理)について、陰性対照群及び被験物質処理群を設定して用量設定試験を行った。用量設定試験の結果に基づき、各処理条件について、陰性対照群、0.130.250.50

1.0 及び 2.0 mg/mL の濃度の被験物質処理群、陽性対照群を設定して染色体異常試験を行った。その結果、沈殿(処理終了時)は、いずれの処理条件においても認められなかった。また、40%未満となる相対細胞数増加率は、いずれの処理条件においても認められなかった。したがって、0.501.0 および 2.0 mg/mL の濃度の被験物質処理群について染色体分析を行った。染色体分析の結果、いずれの処理条件においても、構造異常を有する細胞数及び倍数性細胞数の統計学的に有意な増加は認められなかった。一方、陽性対照群については構造異常を有する細胞の有意な増加が認められた。

以上の結果より、当該試験条件下において、オリゴガラクチュロン酸は CHL/IU 細胞に対する染色体異常誘発作用を有しない(陰性)と結論した 4)


オリゴガラクチュロン酸の生体内での染色体異常誘発性の有無を、マウス

Crl:CD1(ICR)系の雄)骨髄を用いる小核試験において検討した。被験物質は混合物のため純度 100%として試験を実施した。溶媒は注射用水(溶解)とし、純度換算は行わなかった。

毒性予備試験は、雌雄マウスを用いて、被験物質を 2505001000 及び 2000 mg/kg体重/日の用量で、1 1 回、24 時間間隔で 2 日間強制経口投与した。その結果、いずれの投与群においても一般状態の変化及び死亡は認められず、最大耐量は雌雄マウスともに 2000 mg/kg 体重/日であった。

毒性予備試験の結果に基づき、小核本試験は、陰性対照群(日局注射用水)、被験物質投与群(5001000 及び 2000 mg/kg 体重/日)及び陽性対照群(cyclophosphamide monohydrate)の計 5 群を設定し、雄マウスを用いて行った。陰性対照群及び被験物

質投与群は、1 1 回、24 時間間隔で 2 日間強制経口投与した。陽性対照群は 50 mg/kg の用量で、単回強制経口投与した。いずれの投与群も、最終投与の 1824 時間後に骨髄塗抹標本を作製して小核の観察を行った。その結果、被験物質投与群の小核出現頻度に統計学的な有意差は認められなかった。一方、陽性対照群の小核出現頻度は 1%水準で有意な増加が認められ、本試験系の妥当性が確認された。赤血球中に占める幼若赤血球の比率は、被験物質投与群と陰性対照群との間に統計学的な有意差は認められなかった。

以上の結果から、本試験条件下では、オリゴガラクチュロン酸は、マウス骨髄細胞において染色体異常誘発作用を示さない(陰性)と結論した 4)


遺伝毒性試験のまとめ Ames 試験 陰性染色体異常試験 陰性 in vivo 小核試験 陰性総合判定 陰性

4)海外評価書における扱い情報なし

5.検討結果のまとめ

上記の安全性試験の結果を踏まえ、現状の添加物としての使用において、ヒトの健康影響に対する懸念はないと結論された。

6.参考資料

  1. 佐藤恭子、生産量統計調査を基にした食品添加物摂取量の推定に係る研究 その2既存添加物品目、平成28年度厚生労働科学研究費補助金(食品の安全確保推進研究事業)「食品添加物の安全性確保のための研究」分担研究「食品添加物の摂取量推計及び香料規格に関する研究」、20173

  2. 佐藤恭子、生産量統計調査を基にした食品添加物摂取量の推定に係る研究 その2既存添加物品目、令和元年度厚生労働科学研究費補助金(食品の安全確保推進研究事業)「食品添加物の安全性確保に資する研究」分担研究「食品添加物の摂取量推計及び香料規格に関する研究」、20203

  3. 赤根弘敏、豊田武士、松下幸平、森川朋美、小川久美子、令和3年度 既存添加物の安全性に関する試験「ラットを用いたオリゴガラクチュロン酸の90日間反復経口投与毒性試験」、最終報告書、2022329

  4. 杉山圭一、令和2年度 指定添加物・既存添加物の安全性に関する試験報告書、2021331