エレミ樹脂

1.食品添加物名
 エレミ樹脂(エレミの分泌液から得られた、β-アミリンを主成分とするものをいう。)
2.基原、製法、本質
 カンラン科エレミ( Canarium luzonicum A.GRAY)の分泌液を、乾燥して得られたものである。主成分はβ-アミリンである。
3.主な用途
 ガムベース、増粘安定剤
4.安全性試験成績の概要
(1)90日間反復投与試験
 F344/DuCrj系雌雄ラットに、強制経口(30、200、1000 mg/kg体重)投与による13週間反復投与試験を行った。その結果、いずれの群の動物においても死亡は認められず、一般状態、体重、摂餌量、眼科的検査、尿検査及び剖検において、被験物質に関連する変化は認められなかった。
 血液学的検査では、200 mg/kg以上の群の雄でPT及びAPTTの延長又は延長傾向が認められた。
血液生化学的検査では、30 mg/kg以上の雌雄でリン脂質の高値、雌で総コレステロールの高値、雄でα2-グロブリン比の高値とアルブミン値及びA/G比の低値が、200 mg/kg以上の雌雄でβ-グロブリン比の高値、雌でγ-GTP及び総蛋白量の高値とアルブミン値及びA/G比の低値、雄でα1-グロブリン比の高値が、1000 mg/kgの雌でα1-グロブリン比の高値、雄でγ-GTP及び総コレステロールの高値が認められた。
 器官重量では、200 mg/kg以上の雌雄で副腎の絶対重量の高値、雌で肝臓の絶対及び相対重量の高値、1000 mg/kg群の雌雄で副腎の相対重量の高値が認められた。
 病理組織学的検査では、200 mg/kg以上の群の雌で小葉辺縁部の肝細胞の脂肪変性が認められ、200 mg/kg以上の群の雌雄で副腎束状帯の皮質細胞の脂肪変性が認められた。
 以上から、肝臓への影響が30 mg/kg以上の群の雌雄で、副腎への影響が200 mg/kg以上の群の雌雄で認められた。30 mg/kg群では、リン脂質を除く血液生化学検査値の変化はいずれも背景データの範囲内の変動であり、肝重量に変化はなく、肝臓の病理組織学的な変化も認められていないことを考慮すると、その毒性学的意義は乏しいと考えられた。したがって、無影響量は雌雄とも30 mg/kg/日未満、無毒性量は雌雄とも30 mg/kg/日と考えられる。1)
(2)遺伝毒性試験
 細菌を用いた復帰突然変異試験及び哺乳類培養細胞(CHL/IU)を用いた染色体異常試験が行われており、いずれも陰性であった。2) また、 枯草菌を用いるDNA修復試験(Rec-assay法)が行われており、陰性であった。3)
 マウス(ddY系、雄)の骨髄を用いた小核試験は、限界用量である2000 mg/kg×2まで試験されており、いずれの用量においても小核の誘発は認められなかった。4)
 以上から、エレミ樹脂には遺伝毒性はないと判断した。

(引用文献)
1.小野宏:平成15年度既存添加物の安全性に関する試験、(財)食品薬品安全センター秦野研究所
2.林真:厚生省等による食品添加物の変異原性評価データシート(昭和54年度~平成10年度分)
3.祖父尼俊雄:食品添加物の変異原性試験成績(その11)(平成元年度厚生省試験研究費による)
4.宮澤眞紀:平成16年度既存添加物の安全性確保上必要な品質問題に関する研究、神奈川県衛生研究所