ばい煎ダイズ抽出物
食品添加物名
ばい煎ダイズ抽出物(ダイズの種子から得られた、マルトールを主成分とするものをいう。)
基原、製法、本質
ダイズの種子を脱脂し、ばい煎したものより、熱時水で抽出後、温時エタノールでタンパク質を除去して得られたものであり、成分としてマルトールを含む。
主な用途
製造用剤
安全性試験成績の概要
9 0日間反復投与試験
Wistar Hannover GALASラットを用いた飲水(し25、2.5、5%)投与による 13週間反復投与試験を行った。その結果、動物の死亡は認められず、体重、摂佃量及び飲水量において被験物質投与に起囚した変化は認められなかった。
血液学的検査において、雄5%投与群でWBC数の減少が認められているが、
病理組織学的検査より造血系への巽常は認められていないことから、被験物質に起因したものとは判断されなかった。
血消生化学的検盗において、雄5%投与群でALBの低下が認められでいるが、変動幅はわずかであり、毒性学的意義はないと判断された。
臓器重抵測定において、下垂体、m状腺、腎臓及び肝臓重量の変化が認め
られたが、組織学的な変化もなく、1開発的な変化であると考えられた。
以上から、無誨性散は5%(雄3.41 g/kg/dayおよび雌5.40 g/kg/day)と考えられた。1)
遺伝囃性試験
細菌(TA98、TAlOO、TA1535、TA1537、WP2uvrA)を用いた復帰突然変異試験は、5000µ g/7°\I→まで試験され、代謝活性化の有無にかかわらず陰性であった。2)
哺乳類培養細胞(CHL/IU)を用いて、最高処理濃度5 mg/mLで染色体異常試験を行った結果、短時間処理法では代謝活性化の有無に係わらず陰性であった。しかし、連続処理において最高用最とした5-rrig/mlでは、染色体の構造異常が認められた。また、哺乳類培養細胞(CHL/IU)を用いた代謝活性化系非存在下で実施したin vitro小核試験においては、全ての投与群において小核が観察された。陽性反応は全て5 mg/mLの最高用量においてのみ観察されるが、その誘発頻度が高いこと、及びその陽性反応に再現性があることから、変異原性を有するものと結論づけられた。3)
マウス(ddY系、雄)の骨髄を用いた小核試験は、限界用最である2000 mg/kgまで試験されており、いずれの用量においても小核の誘発は認められなかった。4)
以上の結果から、染色体異常試験で陽性の結果が得られているものの、十分高用量まで試験されたin vivo小核試験で陰性であることなど考慮すると、生体にとって特段問題となる遺伝毒性はないものと考えられる。
1年間反復投与毒性試験
F334系ラットを用いた飲水(0.63、1.25、2.5、5%)投与による1年間反復投与毒性試験では、動物の死亡及び一般状態の変化は認められず、尿検査においても被験物質に起因すると考えられる変化は認められなかった。
体重、摂餌量及び摂水量では、2.5%以上の群の雌及び5%群の雄で体重増加抑制が、2.5%以上の群の雌雄で摂餌量の低下傾向が、雌で摂水量の低下傾向が認められた。
血液学的検査では、5%群の雄でHt及びMCVの増加、MCHCの低下が認
められた。また、血液生化学的検査では、2.5%以上の群の雄でNaの増加が、
5%群の雄でALP、BUN及びKの低下、雌でTP、Alb及びT-Choの低下、'Y
-GPT及びCaの増加が認められた。しかしこれらの値の変動はごく軽度であり、他に関連する病理所見などの変化も認められなかったことから粛性学的意義に乏しい変化と考えられた。
臓器重菌では、2.5%以上の群の雌で子宮の絶対重菌の低下、脳の相対頸最
の増加が、5%群の雄で脳の絶対/相対重緻の増加、肝臓の絶対重量の低下、喘臓の相対重量の増加、雌で肝臓の絶対璽批の低下、脳、腎臓及び卵巣の相対重紐の増加が認められた。しかしこれらの値の変動範囲はごく軽度であり、病理組織学的変化を伴っていないことから、毒性学的意義はないものと考えられた。
病理組織学的検査では、被験物質投与の影懇を示唆する所見は認められなかった。
以上から、無毒性菌は雄で2.5% (2.17 g/kg/day)、雌で1.25% (1.32 g/kg/day)
であると考えられた。5)
なお、 トランスジェニックマウス(Rev]ホモマウス)を用いた1年間反復投与毒性試験の報告があるが、これについては、本試験が特殊な遺伝子改変マウスでの試験であることから、無毒性抵設定の対象としなかった。
(引用文献)
三森同敏:平成1 3年度食品添加物規格甚準作成等の試験検香、東京農工 大学農学部
一花次夫:平成1 6年度食品 添加物等規格基準に関する試験検杏等について、(株)化合物安全性研究所
林莫:平成1 1年度食品添加物安全性再評価等の試験、国立医薬品食品衛 生研究所変異追伝部
蜂谷紀之:平成1 1年度食品添加物安全性再評価試験、秋田大学医学部
神谷研二:厚生労働科学研究聾補助金「既存添加物の発がん性等に関する安全性評価研究ーモデル動物の開発とばい煎大豆抽出物の発がん性等の検索ー」、広島大学原爆放射線医科学研究所