ばい煎コメヌカ抽出物(325)

1.食品添加物名
 ばい煎コメヌカ抽出物

2.基原、製法、本質
 イネ科イネ( Oryza sativa LINNE)の米ぬかを脱脂し、ばい煎したものを、熱時水で抽出後、温時エタノールでタンパク質を除去したものである。成分としてマルトールを含む。

3.主な用途
 製造用剤

4.安全性試験成績の概要
(1)90日間反復投与試験
 F344系雌雄ラットに、混餌(0.5%、1.5%、5.0%)投与による90日反復投与試験を行った。その結果、いずれの群の動物においても死亡は認められず、一般状態、体重、摂餌量、血液学的検査及び器官重量において、被験物質に関連する変化は認められなかった。
 血液生化学的検査では、5.0%群の雌でA/Gの上昇が認められたが、変化の程度が小さく、他の項目では変化が認められないことから、被験物質の投与に関連する変化ではないと判断した。
  病理組織学的検査では、5.0%群の雄で肝細胞の軽微及び軽度の壊死が、雌で唾液腺の軽度の壊死、腎の皮髄境界部の尿細管の鉱質沈着及び子宮内腔の軽度の拡張が認められたが、これらの所見の発生頻度は低く、対照群との間に統計学的な差は認められないことから、被験物質の投与に関連する変化ではないと判断した。
 以上から、無毒性量は雌雄で5.0%(雄:2893 mg/kg/日、雌:3096 mg/kg/日)と判断した。1)

(2)遺伝毒性試験
 細菌(TA98、TA100、TA1535、TA1537、TA1538)を用いた復帰突然変異試験は、200μl/plateまで試験されており、代謝活性化系存在下、TA98株及びTA1538株に対して100μl/plate以上の濃度で溶媒対象の1.5倍から1.7倍、T100株に対して200μl/plateで溶媒対象の1.6倍のHis+復帰コロニーを誘発し、濃度依存性を示した。また、再現性も認められたため擬陽性と判断した。2)
 哺乳類培養細胞(CHL)を用いて、短時間処理法、連続処理法とも最高処理濃度5000μg/mlの染色体異常試験を行った結果、染色体異常の誘発は認められなかった。3)
 マウス(ddY系、雄)の骨髄を用いた小核試験は、3000 mg/kg×2まで試験されており、いずれの用量においても小核出現頻度の有意な増加は認められなかった。4)
 以上から、細菌を用いた復帰突然変異試験で擬陽性の結果が得られているが、十分高用量まで試験された in vivo の小核試験で陰性であることなどを総合的に評価すると、ばい煎コメヌカ抽出物が生体にとって特に問題となるような遺伝毒性を発現することはないものと考える。

 
(引用文献)
1.菅野純:F344ラットによるばい煎コメヌカ抽出物の90日反復投与毒性試験、国立医薬品食品衛生研究所安全性生物試験研究センター毒性部
2.宮部正樹:平成9年度食品添加物規格基準作成等の試験検査、名古屋市衛生研究所
3.望月信彦:平成9年度食品添加物規格基準作成等の試験検査、(財)食品農医薬品安全性評価センター
4.蜂谷紀之:平成9年度食品添加物規格基準作成等の試験検査、秋田大学医学部