α-アセトラクタートデカルボキシラーゼ

英名: α-Acetolactate Decarboxylase CAS No. 9025-02-9

JECFA No. 該当なし別名: 該当なし

構造式: -


  1. 基原・製法

    細菌(Bacillus licheniformisBacillus subtilis 及び Serratia 属に限る)の培養物から得られた、α-アセト乳酸のカルボキシ基を離脱する酵素である。食品(賦形、粉末化、希釈、安定化、保存又は力価調整の目的に限る)又は添加物(賦形、粉末化、希釈、安定化、保存、pH 調整又は力価調整の目的に限る)を含むことがある。


  2. 主な用途

    発酵中に α-アセト乳酸から不快な味の α-ジアセチルが形成されるのを避けるため、醸造およびアルコール産業で加工助剤として使用される。


  3. 安全性試験の概要

    1. 急性毒性試験

      経口投与の情報なし


    2. 反復投与毒性試験

      CD ラット(雌雄各群 20 匹)にα-アセトラクタートデカルボキシラーゼの非安定型 ALDC92.9% TOS)、グルタルアルデヒド安定型 d- ALDC92.8% TOS)を それぞれ 13 週間混餌投与したところ,500 mg/kg 群の雄でわずかな血小板数の増加が見られたが、それ以外に被験物質に起因する毒性影響はみられなかった 1)


      Sprague-Dawley ラット(雌雄各群 10 匹)に α-アセトラクタートデカルボキシラーゼを 90 日間混餌投与したところ, NOAEL は最高用量の 1,018 mg TOS/kg 体重/日と考えられた 2)


    3. 変異原性試験

      Ames 試験、ほ乳類細胞を用いた染色体異常試験、小核試験及び遺伝子突然変異試験が

      実施されており、すべて陰性と報告されている。


      Ames 試験:陰性; TA100TA1535TA98TA1537 3010,000 µg/plate (代謝活性化および非代謝活性化) 3)

      Ames 試験:陰性; TA100TA1535WP2uvrA(pKM101)TA98TA1537 1565,000 µg/plate (代謝活性化および非代謝活性化) 2)

      ほ乳類細胞を用いた染色体異常試験:陰性; ヒトリンパ球 445,000 µg/mL (代謝活性化および非代謝活性化)20 時間および 44 時間処理)3)

      ほ乳類細胞を用いた小核試験:陰性; ヒトリンパ球 3,0005,000 µg/mL (代謝活性化および非代謝活性化) 3 時間処理)、1003,000 µg/mL (非代謝活性化) 24 時間処理)2)

      ほ乳類細胞を用いた遺伝子突然変異試験(HGPRT 遺伝子):陰性; L5178Y 細胞 1.58

      5,000 µg/mL (代謝活性化および非代謝活性化) 2 時間処理)3)


    4. その他

      毒性が懸念される報告はない。


    5. 海外評価書における扱い

      JECFA では、次の 2 種類の α-アセトラクタートデカルボキシラーゼについて毒性試験を行った。

      Bacillus brevis 由来の α-アセトラクタートデカルボキシラーゼ遺伝子を持つ細菌

      (Bacillus subtilis)の深部発酵により得られたもの 4)

      ②遺伝子組み換え Bacillus licheniformis NZYM-LB 系統で生産したもの 2)

      その結果、α-アセトラクタートデカルボキシラーゼは毒性の弱い酵素であり、追加の毒性試験は必要ないと考え、暫定 ADI を特定しない(not specified)としている 3), 5),


  4. 結論

    本既存添加物は、日本国内で流通しているものについては、安全性に懸念はないと考えられる。


  5. 参考資料

    1. Broadmeadow, A. (1990) ALDC: Toxicity study by dietary administration to CD rats for 13-weeks. Unpublished report No. 90/0691 from Life Science Research Ltd (Submitted to WHO by Novo NordiskA/S, Denmark).

      (参考資料 1 は、参考資料 3 に引用されている)

    2. EFSA (European Food Safety Authority), 2018. Safety evaluation of the food enzyme acetolactate decarboxylase from a genetically modified Bacillus licheniformis (strain NZYM-JB), EFSA Journal · November 2018

    3. JECFA: Safety evaluation of certain food additives (1998), WHO FOOD ADDITIVES SERIES 40

    4. JECFA: Safety evaluation of certain food additives and contaminants (1999), WHO Technical Report Series 884

    5. JECFA: Evaluation of certain food additives (2000), WHO Technical Report Series 891