d-γ-トコフェロール
英名: d-γ-Tocopherol CAS No. 54-28-4
JECFA No. 該当なし 別名: γ-Vitamin E
構造式:
基原・製法
油糧種子から得られた植物性油脂又はミックストコフェロール(植物性油脂から得られたd-α-トコフェロール、d-β-トコフェロール、d-γ-トコフェロール及び d-δ -トコフェロールを主成分とするものをいう)から分離して得られた、d-γ-トコフェロールを主成分とするものである。食用油脂を含むことがある。
主な用途
酸化防止剤、強化剤
安全性試験の概要
経口投与の情報なし
天然型である d-γ-トコフェロールを用いた試験の情報はなく、合成型の dl-γ-トコフェロールを用いた試験情報のみ認められる。
Wistar ラット(雌雄各群 6 匹)に、無処置群に加え、大豆オイルを溶媒として 0、800、 1,600(雌のみ)mg/kg 体重/日のdl-γ-トコフェロールを 13 週間強制経口投与した。雌の両投与群では、血小板数、総脂質、T-CHO の有意な低下及びCK の増加、雌の 1,600 mg/kg群では、BIL、ALT 及び肝臓と脾臓の絶対及び相対重量の増加を認めた。雄の 800 mg/kg群(唯一の投与群)では、CK 及び ALT の増加を認めた。雌雄の投与群で、腸間膜リンパ節に貪食細胞の凝集を認めた。著者等は貪食細胞の凝集及び肝重量の増加は、それぞれ被験物質に対する生理的反応及び適応反応として判断した。NOAEL は得られなかった
1)。
Syrian golden ハムスター(雌雄各群 10 匹)に、無処置群に加え、大豆オイルを溶媒として 0、2,000 mg/kg 体重/日の dl-γ-トコフェロールを少なくとも 28 日間強制経口投与した。雌雄の投与群では、APTT 及び PT の有意な延長を認めた。雌の投与群では、総脂質、T-CHO 及び PL の有意な低下がみられた。著者等は、こられはトコフェロールのよく知られた作用としている。雄の投与群では、Cre の増加を認めた 2)。
Syrian golden ハムスター(雌各群 10 匹)に、無処置群に加え、大豆オイルを溶媒として 0、800 mg/kg 体重/日のdl-γ-トコフェロールを 13 週間強制経口投与した。APTT 及び PT の有意な延長並びに BIL、ALP 及び γ-グルタミルトランスフェラーゼの有意な増加を認めた。腸間膜リンパ節に貪食細胞の凝集も認めた。動物の匹数及び投与群は限定的であるが 1)、EFSA panel は本試験のNOAEL は 800 mg/kg 体重/日以下としている 3)。
Ames 試験、染色体異常試験及び in vivo 小核試験が実施されており、全て陰性と報告されている 4)。
Ames 試験:陰性;5,000 g/plate
染色体異常試験:陰性;5,000 g/mL
小核試験:陰性;2,000 mg/kg 体重
毒性が懸念される報告はない。
JECFAでは、dl 体及びd 体のα-tocopherolのデータをもとに、グループADI として,0.15-2 mg/kg体重/日と設定している。Tocopherol concentrate, mixedとして d- alpha-, d-beta-, d-gamma-, d-delta-tocopherolsを含むとしている5) 。
欧州食品安全機関(EFSA)では、利用可能な毒性データが限られているため、ADIを設定することはできないが、ビタミンEは食品として広く摂取される必要な栄養素であり、現在の食品添加物としての用途及び使用濃度では、トコフェロール類(E 306~E 309, tocopherol-rich extract of natural origin (E 306), synthetic α-tocopherol (all-rac- α-tocopherol; dl-α-tocopherol; E 307), synthetic γ-tocopherol (dl-γ-tocopherol; E 308) and synthetic δ-tocopherol)に安全性の懸念はないとしている3) 。
結論
本既存添加物は、日本国内で流通しているものについては、安全性に懸念はないと考え
られる。
参考資料
Pfister T, Pfannkuch F, Wolz E and Richard D, 1999d. RRR-α-tocopheryl acetate (Ro 01-4147) and all-rac-γ-tocopherol (Ro 01-4159): 13-week oral toxicity (gavage) study in the rat and in the hamster (974V98). Unpublished report submitted by DSM, June 2010.
Pfister T, Pfannkuch F, Wolz E and Richard D, 1999d. RRR-α-tocopheryl acetate (Ro 01-4147) and all-rac-γ-tocopherol (Ro 01-4159): 28-day oral toxicity (gavage) study in the hamster (973V98). Unpublished report submitted by DSM, March 2010.
EFSA ANS Panel (EFSA Panel on Food Additives and Nutrient Sources added to Food), 2015. Scientific Opinion on the re-evaluation of tocopherol-rich extract (E 306), α-tocopherol (E 307), γ-tocopherol (E 308) and δ-tocopherol (E 309) as food additives. EFSA Journal 2015;13(9):4247, 118 pp. doi:10.2903/j.efsa.2015.4247 Available online: https://efsa.onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.2903/j.efsa.2015.4247(参考資料 1 お
よび 2 は、参考資料 3 に引用されている)
林、田中:食品衛生学雑誌 46, 5, 177-184 (2005)
JECFA: 30th meeting (1986) WHO Food Additives Series 21, TRS 751 http://www.inchem.org/documents/jecfa/jecmono/v21je05.htm http://www.fao.org/fileadmin/user_upload/jecfa_additives/docs/Monograph1/additi ve-469-m1.pdf