D-キシロース

英名: D-Xylose

CAS No. 58-86-6

JECFA No. 該当なし

別名: D-Xylopyranose

分子量: 150.13

分子式: C5H10O5

構造式:

α-D-キシロピラノース:R1=HR2=OH β-D-キシロピラノース:R1=OHR2=H



  1. 基原・製法

    木材又はアオイ科ワタ(Gossypium arboretum LINNE)、イネ科イネ(Oryza sativa LINNE)、イネ科サトウキビ(Saccharum officinarum LINNE)若しくはイネ科トウモロコシ(Zea Mays LINNE)又はその他同属植物の茎、実又は殻より、熱時酸性水溶液で加水分解し、分離して得られたものである。成分は D-キシロースである。

  2. 主な用途

    甘味料

  3. 安全性試験の概要

    1. 急性毒性試験

      マウス経口 LD50 > 23 g/kg 1)


    2. 反復投与毒性試験

      D-キシロースを F344/DuCrlCrlj ラット(雌雄各 10 /群)に 0.2%0.6%1.7%及び 5.0%の濃度で 13 週間混餌投与した。試験期間中、雌雄各群ともに一般状態変化は認められず体重の推移に投与による影響はみられなかった。血液学検査の結果、RBCHGB 及び HCT の有意な高値が雄の 0.6%及び 5.0%群でみられ、雌の全投与群ではこれらの有意な低値がみられたが、正常値範囲内であり、用量相関性もなく、病理組織学的にも造血系に異常を示唆する組織所見は見られなかったことから毒性学的意義は乏しい

      と考えられた。血清生化学的検査の結果、AST 及び T-CHO の有意な低値が雄の 0.2%及 び 5.0%群でみられ、雌では AST の有意な低値が 0.2%1.7%及び 5.0%群で見られたが、用量相関性は認められず、肝臓を含めた諸臓器に組織障害はみられなかったことから毒性学的意義は乏しいと考えられた。雄の肝、精巣及び雌の肝及び腎における相対重量の変動が認められたが、軽度な変化であり、他の関連パラメーターに変化が認められなかったことから毒性学的意義は乏しいと考えられた。病理組織学的検索の結果、雌雄とも対照群を含め肝細胞小葉中心性に軽度の空砲変性及び髄外造血がみられた。また、雄の腎臓に好塩基性尿細管の出現、心臓に小肉芽腫が認められた。雌では腎臓に鉱質沈着、膵腺房細胞に限局性の萎縮がみられたが、用量相関性は認められなかったこと、F344 ラットで自然発生することが知られている病変であることから、偶発的な変化と考えられた。以上から、ラットでの混餌投与による D-キシロースの最大耐量は雌雄ともに 5.0%以上と判断した 2)

    3. 2 年間発がん性試験

      D-キシロース(純度>99%)をF344/DuCrlCrlj ラット(雌雄各 50 /群)に 2.5%及び 5.0%の濃度で 2 年間混餌投与(雄 1,0332,214 mg/kg 体重/日、雌 1,2032,513 mg/kg 体重/日相当)した。試験期間中、雌雄ともに 5.0%群では体重増加抑制と軟便が認められた。しかしながら、死亡率において対照群との有意な差は認められなかった。血液学検査において対照群に比して有意な変化は見られなかった。雄の 5.0%群では脳の絶対重量の減少と相対重量の増加が、雌の 5.0%群では腎の絶対重量の減少が認められたものの、病理組織学的検査において変化は認められなかった。対照群を含むすべての群で様々な腫瘍が発生したものの、いずれも F344/DuCrlCrlj ラットにおいて自然発生することが知られている腫瘍であり、それらの発生率も対照群との間に有意な差はみられなかった。以上の結果から、ラットにおいて D-キシロースの発がん性はないと判断した 3)

    4. 変異原性試験

      ネズミチフス菌(TA92, TA1535, TA100, TA1537, TA94, TA98)を用いた復帰変異試験は±S9 mix で陰性(最高用量 50 mg/plate)、培養細胞(CHL)を用いた染色体異常試験は-S9 mix で陰性(最高用量 2.0 mg/mL)。ネズミチフス菌(TA100, TA1535, TA98, TA1537, TA1538)を用いた復帰変異試験は±S9 mix で陰性(最高用量 40 mg/plate)、培養細胞(CHL/IU)を用いた染色体異常試験は±S9 mix で陰性(最高用量 2.5 mg/mL)、枯草菌を用いた Rec-assay は±S9 mix で陰性(最高用量 20 mg/disk)。ネズミチフス菌(TA97a, TA102)を用いた復帰変異試験は±S9 mix で陰性(最高用量 50 mg/plate4)

    5. その他

      その他試験に関する情報なし

    6. 海外評価書における扱い海外での評価情報なし

  4. 食品添加物公定書の規格

    規格あり

  5. 結論

    D-キシロースは、その基原、製法及び本質と、入手可能な安全性試験の情報(急性毒性試験、反復投与毒性試験、発がん性試験並びに変異原性試験)に鑑みて、人の健康影響に対する懸念はないものと結論された。

  6. 参考資料

  1. RTECS Number: ZF2285000

  2. 今沢孝喜、西川秋佳、古川文夫、池田尚子、中村英明、宮内 慎、広瀬雅雄 D-キシロースの F344 ラットにおける 13 週間亜慢性毒性試験 国立医薬品食品衛生研究所報告. 1999; 117: 115-118

  3. Kuroiwa Y., Nishikawa A., Imazawa T., Kitamura Y., Kanki K., Umemura T., Hirose

    M. Lack of carcinogenicity of D-xylose given in the diet to F344 rats for two years. Food Chem. Toxicol. 2005; 43(9): 1399-1404.

  4. 9 版食品添加物公定書解説書 2019